■那須与一 扇の的
一の谷に破れたばかりの平家軍は見えぬ敵に怯えて、海上に逃れる。
だが やがて屋島に白旗を翻したのは奇襲が得意な義経勢 わずか百騎。
海と陸に別れたこの戦では弓をめぐる逸話が多い。
弓の弱さを恥じて、命がけで流した弓を拾った義経。
主君に代わって平家の勇将 教経の強弓を胸板に受けた佐藤嗣信。
そして圧巻は、那須与一扇の的。
悲壮な戦の最中に、弓の腕自慢を披露するなどとは、ナントゆとりのある
戦感覚かと現代では理解できかねる状況に思えるが、
この大事な場面で成功すれば、たちまちヒーローになれると、
敵も見方も固唾を呑んで見守っていた事だろう。
見事扇を射落とした与一は血気にはやり、その腕を誉めて舞う
平家武者をも射殺してしまったという記事を読んだ事がある。
一躍脚光を浴びた無名の与一は、それほど 狂うほどに
興奮したかと うかがわれる。 |